国際連語論学会設立大会プログラム1日目

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日時
2013年2月9日(土)午前9時00分より午後5時30分まで
会場
大東文化会館ホール 設立大会参加費:2日間500円(会員、非会員共通)

※当日入会申し込み、学会費の納入も受け付けます。(年会費:社会人2000円、院生1000円)

プログラム 

 
受付(9:00-)
総合司会 神野智久(湖南大学)
開会の辞彭広陸(北京大学)9:10-9:20
研究発表1.日中両言語における受身表現の扱いについて
李鵬(東京大学研究生)
9:20-9:55
研究発表2.構造助詞“的”を用いる受け手主語について
劉爾瑟(大東文化大学大学院博士前期課程)
9:55-10:30
研究発表3.構造から“在+空间词”と格付き空間詞の関係を見る
洪安瀾(大東文化大学大学院博士前期課程)
10:30-11:05
以上司会 白愛仙(明星大学非常勤)
休憩 15分(11:05-11:20)
研究発表4.時態副詞“在”が表す二つの進行性
青木萌(神奈川大学大学院博士後期課程)
11:20-11:55
研究発表5.日本における中国語動補構造研究の現状
蔡娟(大東文化大学博士後期課程)
11:55-12:30
以上司会 石井宏明(東海大学非常勤)
昼休み 60分(12:30-13:30)※近くにレストラン多数あり
研究発表6.19世紀末に翻訳されたナポレオン法典における日中法律新語の性質
―箕作麟祥訳と畢利幹訳を例に―
藤本健一(大東文化大学大学院博士後期課程)
13:30-14:05
研究発表7.「N+N」複合語に関する「の」の脱落について
楊玉玲(北京語言大学博士後期課程)
14:05-14:40
研究発表8.「重複を表す“还”と“再”について」
安本真弓(高千穂大学)
14:40-15:15
以上司会 戴宝玉(上海外国語大学)
休憩 15分(15:15-15:30)
研究発表9.日本語助数詞「枚」と中国語量詞“张”“片”における認知分析
(株)ヒューマンサービス中国語講座楽学 長野由季
15:30-16:05
研究発表10.日中対照の視点から見た指示詞の省略表現
邱麗君(大東文化大学博士後期課程)
16:05-16:40
研究発表11.日中両言語における受身のむすびつき
高橋弥守彦(大東文化大学)
16:40-17:15
以上司会 田中寛(大東文化大学)
閉会の辞劉笑明(天津外国語大学)17:15-17:30
 

発表要旨

研究発表1. 日中両言語における受身表現の扱いについて
李鵬(東京大学研究生)

 日本語の受身文は動詞のヴォイスの一つとしての「レル/ラレル」を用いた文である。中国語の受身表現は“被字句”・意味上の受身表現・語彙上の受身表現の3種類に分かれると言われている。

 本発表では日中両言語に共通する受身表現を先行研究ではどのように扱い、これからどのように扱うべきかを先行研究と実例により分析し、受身表現研究の第一歩を踏み出したいと考えている。

研究発表2. 構造助詞“的”を用いる受け手主語について
劉爾瑟(大東文化大学大学院博士前期課程)

 中国語の受身表現は“被字句”、語彙上の受身表現、意味上の受身表現の3種類に大別できると思われる。そして、「受け手+“被/为”+仕手+“所”+動詞」は“被字句”の基本構造と看做してもよい。日本語の受身文では非情物が主語の位置に立つことがあまり多くないが、中国語の“被字句”においては非情物主語がよく見かけると言われる。

(1) 我的钱包被人给偷走了。(高橋2012:7)
    財布が盗まれた。(高橋訳)
(2) 燕宁的后半句话被一片欢呼声淹没了。(轮椅上的梦)
    燕寧の話の後半は、みなの歓声にかき消された。(北京日本学研究センターコーパス)
(3) 她的书终于被爸爸夺走了。(金光大道)
    本は父親にもっていかれてしまった。(北京日本学研究センターコーパス)

 以上の例文はごく普通の“被字句”である。実は、これらの例文は以下のように書き換えることができる。

(1’) 我被人给偷走了钱包。
(2’) 燕宁被一片欢呼声淹没了后半句话。
(3’) 她终于被爸爸夺走了书。

 例文(1)(2)(3)のような文は、構造助詞“的”を用いる受け手主語の“被字句”(所有物主語の“被字句”)と呼び、例文(1’)(2’)(3’)は持ち主主語の“被字句”と呼ぶことにした。文意から考えるとあまり違わないが、文構造上見ると、

Ⅰ “N1(受け手)+的+N2(受け手の所有物)+被+N3(仕手)+V+其他成分”
Ⅱ “N1(受け手)+被+N3(仕手)+V+其他成分+N2(受け手の所有物)”

 という二種類の形をとる“被字句”である。  本稿では、文構造ⅠとⅡとの対応関係、談話レベルにおける異同およびその原因を検討する。

研究発表3. 構造から“在+空间词”と格付き空間詞の関係を見る
洪安瀾(大東文化大学大学院博士前期課程)

 以前の論文で、筆者は “在+空间词”が文中における位置を大きく三つに分けている:“在”が本動詞である場合(两个人出了国,李卓在芝加哥,徐悦悦也在美国。)、“在+空间词”が文中述語の前に用いる場合(“彼得在海原俱乐部工作。”のような場合動前式の“在+空间词”と言う)、と“在+空间词”は文中の述語の後ろに用いる場合(“他们把钱都存在银行里。”のような場合は動後式の“在+空间词”と言う)である。

 本稿では、動前式、動後式及びその下位分類の構造により、生み出した意味を、連語論などの説を利用して、“在+空间词”と格付き空間詞の対照関係分析しようとする。 動前式の場合では以下のグラフが示すように、いくつかの構造がある。

 構造から分かる、動前式の場合では“在”の品詞は皆介詞で、“在+空间词”は文中の状況語でり、行為を行う空間、結果の影響が続く空間、及び話の範囲を表している。文中の連語の部分に客語がない場合、普及物動詞が一般的に人間の立ち居の意味とモノ自然的な変化を表している。一つ客語が伴う場合、普通は取り付けや持ち運びなどの意味を表し、時に消失や移動や到着などの意味も表せる。二つの客語が伴う場合、一般的に、第三者にモノを与える意味を表している。

 “在+空间词”は文中の連語の一部分である。“在”の品詞は動詞で、空間詞は客語になる。客語一つしかない場合では、一般的に連語は取り付けや持ち運びなどの意味と人間の立ち居の意味及びモノの自然的な変化を描写できる、動詞が“消失在”“集中在”である場合、連語は消失や到着などの意味も表せる。客語が二つの場合では、主語の意識的に取り付けや持ち運びなどの意味を説明している。

 筆者は“在+空间词”を用いる文を「動前式」と「動後式」のように、大きく二つに分けしている。「空間や範囲を意味する状況語が連語に与える影響」の文レベルの視点から動前式の“在+空间词”を分析し、「客語が空間を意味する場合の連語」の連語論の視点から動後式の“在+空间词”を分析しようとしている。このふうに空間詞と連語の関係を明確して、“在+空间词”と格付き空間詞の対照関係を研究する。

(図表を省略して掲載しました)

研究発表4. 時態副詞“在”が表す二つの進行性
青木萌(神奈川大学大学院博士後期課程)

 本発表は時間副詞の“在”を考察し,以下の四点を明らかにすることを試みる。

 第一に,“在”は時態成分として,[現在]、[過去]、[未来]のどの時制においても生起しえるということをはっきりとさせる。

 二つ目に,“在”は時態成分として[進行]の意を表し,その[進行]は[現場進行]と[空間進行]の二タイプに区分できると考える。例えば[現場進行]を表す文は,

(1) 我的手机在响,手机在楼上包里呢。(テレビドラマ《温柔的背叛》)
   (俺の携帯が鳴っている、携帯は二階の鞄の中だ。)

 である。[空間進行]を表現する例も一つ挙げよう。

(2) 他最近在找工作,心情不太好,我想回家等他。(テレビドラマ《北京爱情故事》)
(彼は最近仕事を探していて、機嫌があまり良くないの、だから家に帰って待つことにするわ。)

 第三としては,“在”が示す[現場進行]は時間幅を表す成分が生起しない傾向にあり,一方,[空間進行]は時間幅を表す成分が生起する傾向にある,ということを提示する。

 四番目に,[現場進行]は出来事地点が一つであり,[空間進行]は出来事地点が複数に及ぶということを証明する。

研究発表5. 日本における中国語動補構造研究の現状
蔡娟(大東文化大学博士後期課程)

 中国語は動補構造(verb-complement structure)の表現が豊かな言語である。動補構造は述語動詞と補語により構成され、補語は述語に付き、動作・状態に対して補足説明を行う。動補構造が表現できる意味は幅広く、その形式も豊富である。言語類型論から見ると、強い類型特性を有する言語現象であるため、世界中の中国語学研究者から注目されている。日本においては数多くの関連論著はそれを物語るように、動補構造に関する研究を大々的に推進・深化させてきた。本発表では、日本で公刊された代表的な著作・論文を収集した上で、研究の対象・範囲・方法・成果など多方面から日本における中国語動補構造研究の現状を概観し、その成果と問題点を分析したい。

研究発表6. 19世紀末に翻訳されたナポレオン法典における日中法律新語の性質
―箕作麟祥訳と畢利幹訳を例に―
藤本健一(大東文化大学大学院博士後期課程)

 箕作麟祥和訳『佛蘭西法律書』(1870-74)と、フランス人在華宣教師ビレクイン(A.A.Billequin,中国名:畢利幹)漢訳《法国律例》(1880)はともにナポレオン法典(Code Napoleon)を底本に翻訳している。しかし、両者の訳語の影響力に関する研究は見当たらない。本発表では両者が翻訳で使用した法律新語が日中両語に与えた影響と、日中法律新語の性質を考察する。

 19世紀末に日本はアジア諸国に先立ち西洋諸国の法制をモデルに近代的法律制度を構築し、中国は日本の法制を参考に近代的法律制度を整えた。この経緯から中国は日本から多くの法律用語を借用することになり、日中同形語が多数現れた。しかし、上記2書は日中両国が本格的に西洋法を導入する前段階の翻訳であり、法律分野において日中語彙の交流があったか定かではない。語彙交流の有無を考察するため、刊行時期が遅い《法国律例》においてビレクインが箕作訳を参照したかを検討する。また、両者の法律新語が後世にどの程度影響力をもったかも考察する。これにより、19世紀末の日中両語における法律新語の性質を明らかにする。

研究発表7. 「N+N」複合語に関する「の」の脱落について
楊玉玲(北京語言大学博士後期課程)

 日本語の名詞連語では、かざりとかざられが両方とも名詞である場合、格助詞「の」の介入が必要だと一般的に認識されている。一方、「脳細胞、女友達、山奥、秋風、深夜バス、ドア枠」などのような「N+N」型の名詞複合語は、「の」がない場合とある場合が両方とも言えるうえ、意味的には何の変化もないというのも事実であろう。これらの単語は、ある意味で「の」が脱落して「N+の+N」の名詞連語から生まれた名詞複合語とでも言えよう。

 本稿では、以上のような名詞複合語を研究対象とし、「の」の脱落はどんな場合に起きるのか、そしてどんなメカニズムによって生じていることに焦点を当てて、認知言語学と言語類型論の視点から分析してみる。また、「人手、袋小路、画風、義歯」などのような名詞連語は、「の」がない場合とある場合とでは意味が違ってくるので、本稿の対象外とする。

研究発表8. 「重複を表す“还”と“再”について」
安本真弓(高千穂大学)

 本発表の考察対象は虚詞に属しているいわゆる中国語副詞としての“还”(中国の簡体字、日本の「還」にあたる、以下は中国の簡体字を使用する)と“再”であり、両副詞は動作行為の重複持続を表す時に、区別しにくい。

 たとえば、次の二例は従来の分析では、なぜ例(1)は“还”、例(2)は“再”か、説明できない。

(1)	我吃过一次烤鸭,今天[还]想吃。
(訳:私は北京タックを1回食べたことがあるが、今日はまた食べたい。)
(2)	要半只烤鸭、两瓶啤酒,[再]要一个麻婆豆腐、一碗担担面。
(訳:タックを半羽、ビールを2本、さらに麻婆豆腐を1つ、担担麺を1つください。)

 そこで、本発表は、江宇冰(2001)の、助動詞の選択とその組み合わせ方において、“还”と“再”は対立補完の形を取っているという指摘を突破口にし、次の仮説を立てる。

“还”→「前提あり」として語用レベルで活躍する
“再”→「単純重複」としてシンタックスで活躍する

 そして、第3章で仮説として立てた「前提あり」の“还”と「単純重複」の“再”を、先行文献で指摘された“还”と“再”の使用方法における異同、すなわち(1)時間域の差異、(2)命令文・平叙文の差異、(3)後続名詞の差異などをもって分析し、仮説は成立することを立証できた。

 最後に、その仮説は問題提起時従来の研究結果では説明できない例(1)と例(2)についても説明ができると考えられる。

研究発表9. 日本語助数詞「枚」と中国語量詞“张”“片”における認知分析
(株)ヒューマンサービス中国語講座楽学 長野由季

 言葉は文化の一部であり、注意深く探求してみると、その言葉を使っている人々の生活習慣や文化的背景が見えてくる。助数詞(量詞)も例外ではなく、話者の持つ文化や思想を巧みに映し出す鏡といえる。本発表では、認知言語学理論に基づき、日本語助数詞「枚」と関連している中国語量詞“张”“片”の語彙分析および認知比較分析を行い、そこから見える日本語話者と中国語話者の観察の角度の違い、思想(考え方)の違いについて検討する。結論として、以下の2点を明らかにする。

  1. ものを観察するとき、日本語話者は全体的、客観的に物事を捉える習慣があり、それに対して中国語話者は、物事の中で、最も重要な部分に着目しており、各々それらを出発点として、連想できる助数詞(量詞)を選択している。よって、カテゴリー化に大きな相違が生まれる。
  2. 中国語量詞は“一片笑声”、“一片丹心”等具体的な物に限らず、意識や心情のような概念的なものに対しても用いることができるため、より豊かな表現力を備えているといえる。これは、漢民族の思想の特徴の一つと言われる“具象思维(抽象的なものを具体化する思想)”を反映している。

研究発表10. 日中対照の視点から見た指示詞の省略表現
邱麗君(大東文化大学博士後期課程)

 周知の通り日中両国の指示詞はそれぞれ省略可能であり、指示表現、反復表現と同様に前文や後文の内容を受け、前後の内容を照らし合わせる役割を担う。省略された指示詞は言語的文脈や非言語的文脈から復元可能である。その省略された要素が各訳文ではどのように訳されているのか。日中指示詞の省略は対応しているかどうかに本稿で焦点を当て、検討したい。

 本稿では日中の作品で指示詞が省略されている用例を取り上げ、指示内容の省略と指示詞のみの省略と二種に分けて調べる。ゼロ照応、ゼロ代名詞を含め、同時に考察しておきたい。また同じく「ソ」系指示詞から成っている接続表現「そのため、そのうえ、そのかわり」は「それなのに」と省略率が違うため、それらの表現は指示機能との関係の度合いが強いか弱いかなどの分析を行う。それらの結果を踏まえながら、日本語教育と関連づけ、指示詞の誤用が起こる原因を改めて考え、教育現場で生かすため、教材の作り方や、教授法の改善などを提案する。

研究発表11. 日中両言語における受身のむすびつき
高橋弥守彦(大東文化大学)

 現実の世界を反映する言葉の世界の文は、原則として現実の世界の「主体+出来事」を言語化して表現されている。日本語は、鈴木康之(『日本語学の常識』2000:45~51)を参考にすると、ヴォイスの体系により下記のような文が作られる。

  1. 姉が弟を褒める。(能動態、能動文)
  2. 弟が姉に褒められる。(受動態、受身文)
  3. 母が姉に弟を褒めさせる。(使役態、使役文)
  4. 姉は母に弟を褒めさせられる。(使役受動態、使役受動態文)

 日本語では動詞の能動態を中心にしてヴォイスの体系が作られ、それぞれの文が作られている。いずれの文であっても「主体+出来事」で作られている。受身文も例外ではない。

 本稿では、能動文(主述文)を基本表現とする体系の中で受身文(“被动句”「受身表現」)をとらえ、日中両言語における受身文(“被动句”「受身表現」)の中における「受身のむすびつき」の特徴について検討する。

 

Last-modified: 2013-02-18 (月) 13:55:12