東アジア国際言語学会2021年7月月例会についてのご連絡
東アジア言語学会会員各位:
梅雨明けまであと10日ほどとなり、暑さに加え、豪雨の被害が心配される今日この頃ですが、会員に皆さまに於かれましてはご清祥の日々をお過ごしのこことお慶び申し上げます。
今月の月例会は、本学会関係者により7月25日に開催されます二つのシンポジウムへのご参加を案内させて頂き、月例会に替えさせて頂きたくお願い申し上げます。
1 田中寛先生
新世紀人文学研究会・記念シンポジウム
――新時代の学際的研究、<知の協働>をもとめて――
- 時間
- 13:00-17:30
- Zoom情報
- URL:https://zoom.us/j/92866365232?pwd=YVFMMjVCVzRHOFRYcDArNHhMR3cxUT09
ミーティングID: 928 6636 5232
パスコード: 559444
2 大東文化大学大学院中国言語文化学専攻・外国語学部中国語学科共催 第21回シンポジウム
- 時間
- 09:30-17:10
- Zoom情報
- URL: https://zoom.us/j/91331578291?pwd=MVZ5WkhRbDViQ1dpeVNVWkZoSjJ3dz09
ミーティングID:913 3157 8291
パスコード:814591
- プログラム
- PDF
東アジア国際言語学会2021年6月 月例会のご案内
東アジア国際言語学会会員
各 位
夏至を目前に控え、梅雨入りも間近となりましたが、会員の皆様に於かれましてはご清栄のこととお慶び申し上げます。
下記日程にて六月月例会を開催致します。前回に引き続き、今回も北京支部よりの推薦を頂きました。万障繰り合わせご参加頂きたくお願い申し上げます。
月例会担当 大島吉郎
- 発表者
- 畢 暁燕(首都師範大学)
- テーマ
- 日中両言語における相対属性叙述をめぐって
- 日時
- 6月26日(土)午後4時~6時
- 方式
- Zoomミーティング
URL: https://zoom.us/j/98434550501?pwd=MUg5MkcvODFmOHJIT0VUSkp3N1lVZz09
ミーティングID:984 3455 0501
パスコード: 903569
発表要旨
自然言語の述語成分には事象叙述(event predication)と属性叙述(property predication)という2つの類型がある。事象叙述機能を担う述語成分は動作動詞、変化動詞であるが、属性叙述機能を担う述語成分は名詞述語と状態述語(あるいは形容詞)である。名詞述語、形容詞述語は時間的には最も安定的である。
中国語の場合、属性叙述機能も状態述語文と名詞文によって担われる。中国語の名詞が述語になる場合、コピュラ“是(BE)”が必要とされるが、“这点他很日本(この点では、彼のやり方はとても日本的なやり方だ)”、“这个女人相当狐狸(彼女は狐のように~)”、“他比警察还警察(彼は警察官よりも警察官の属性をもっている)”のように、“是”がなくても述語になる現象が珍しくない。“是(BE)”が伴われる名詞文は絶対的属性を表すのに対し、“是(BE)”が伴われない名詞状態述語文は相対的属性を表す。後者の場合、程度副詞が文中に来ることによって、または“比N还/更N”構文によって相対的属性叙述機能を獲得できる。
一方、日本語の場合、「-ppoi」「-rashi」「-teki」といった形容詞的接尾辞を着けることによって相対的属性叙述機能を獲得する。
本研究は、中国語における“程度副詞+N” “比N还/更N”と日本語における「N-ppoi」をめぐり、それぞれどのような名詞が当該の位置に来られるか、つまり、日中両言語における相対的属性叙述文の成立する条件を究明しようとするものである。
東アジア国際言語学会2021年5月 月例会のご案内
東アジア国際言語学会会員
各位
立夏の候、会員の皆様に於かれましてはご清祥のこととお慶び申し上げます。
下記日程にて五月月例会を開催致します。就きましては万障繰り合わせご参加頂きたくお願い申し上げます。
月例会担当 大島吉郎
- 発表者
- 杜 盛斌(上海海洋大学)
- テーマ
- 中日二重主語構文から見た統語と語用の接点
- 日時
- 5月15日(土)午後4時~6時
- 方式
- Zoomミーティング
URL:https://zoom.us/j/96366455806?pwd=eVM0TURSV2xhVlQwSG1QaW5UQWVNUT09
ミーティングID:963 6645 5806
パスコード: 547640
発表要旨
中国語と日本語において、次のようなよく知られている二重主語構文が存在する。
(1)a.大象鼻子长。
b.这个女孩眼睛很大。
(2)a.象は鼻が長い。
b.この女の子は目がとても大きい。
本研究では情報構造(information structure)を統語分析に取り入れ、二重主語構文における統語、意味さらには語用間のマッピング(mapping)関係の探求を目的とする。
本研究はロジック判断(logical judgement)の側面から(1)、(2)のような構文を分析したところ、両言語における所有者名詞句は主題判断(categorical judgement)の論理主語(logical subject)で、所有物名詞句は真の文法主語(grammatical subject)であると区別する。論理主語と文法主語の分離こそ二重主語構文成立の統語的基盤だと本研究は主張する。従って、二重主語構文の談話的機能は、論理主語(或いは談話の焦点)を可視化することで、所有者を語用のレベルで取り立てるためであると推論する。つまり、所有者の「主語化」という操作は語用機能の統語的手段であると考え、二つの主語はそれぞれ語用と文法レベルのものだと論ずる。
両言語研究の重要な課題として、多くの研究がなされてきた。従来の研究からも所有者主語と所有物主語は統語的に異なった性格を持っているという指摘がよく見られるが、二つの主語を同じ階層で同列に扱っているものが多い。その結果、建てられた階層構造から文の語用的機能が観察されない。二つの主語の統語的な違いは意味、語用的な必要によるものだと想定し、本研究は生成文法の統語製図(syntax cartographic approach)の方法を用い、二重主語構文の階層マップを作り、二重主語構文から見られる統語、意味と語用間のマッピング関係を提示する。
【参考文献】
- [1] Aissen, J. External Possessor and Logical Subject in Tz’utujil [A]. In: Payne, D. L., Barshi, I. (Eds.), External Possession [C]. Amsterdam: John Benjamins B.V, 1999: 167-193.
- [2] Chappell, H. Inalienability and the Personal Domain in Mandarin Chinese Discourse [A]. In: Chappell, H., McGregor, W. (Eds.), The Grammar of Inalienability. A Typological Perspective on the Part–Whole Relation and Terms for Body Parts [C]. Berlin: Mouton de Gruyter, 1995: 465-527.
- [3] Chappell, H. The Double Unaccusative Construction in Sinitic Language. In: Payne, D. L., Barshi, I. (Eds.), External Possession [C]. Amsterdam: John Benjamins B.V, 1999: 195-228.
- [4] Deguchi, M. Revisiting the Thetic, Categorical Distinction in Japanese [J]. Poznań Studies in Contemporary Linguistics, 2012(48): 223-237.
- [5] Gundel, J. Universals of Topic–Comment Structure [A]. In: Michael, H., Moravacsik, E., Wirth, J. (Eds). Studies in Syntactic Typology. Amsterdam [C]: John Benjamins Publishing Company, 1988: 209-239.
- [6] Haegeman, L., Danckaert, L. Multiple Subject in Flemish: The External Possessor [A]. In: Henry, A., Rhys, C. (Eds.), Microvariation, Minority Languages, Minimalism and Meaning: Proceedings of the Irish Network in Formal Linguistics [C]. Cambridge: Cambridge Scholars Publishing, 2013: 2-21.
- [7] Heycock, C., Doron, E. Categorial Subjects [J]. Gengo Kenkyu, 2003(123): 95-135.
- [8] Kuno, S. The Structure of the Japanese Language. Cambridge: MIT Press, 1973.
- [9] Kuroda, S.-Y. The Categorical and the Thetic Judgments [J]. Foundations of Language, 1972(9): 153-185.
- [10] Kuroda, S.-Y. Movement of Noun Phrases in Japanese [A]. In: Imai, T., Saito, M. (Eds.), Issues in Japanese Linguistics [C]. Foris: Dordreeht, 1986: 229-271.
- [11] Kuroda, S.-Y. Japanese Syntax and Semantics [M]. Dordrecht: Kluwer Academic Publishers, 1992.
- [12] Li, C., Thompson, S.-A. Mandarin Chinese: A Functional Reference Grammar [M]. Berkeley: University of California Press, 1981.
- [13] Munro, P. Chickasaw Subjecthood [A]. In: Payne, D. L., Barshi, I. (Eds.), External Possession [C]. Amsterdam: John Benjamins B.V, 1999: 251-289.
- [14] Payne, D. L., Barshi, I. 1999. External Possession [C]. Amsterdam: John Benjamins B.V, 1999.
- [15] Saito, M. Some Asymmetries in Japanese and their Theoretical Implications [D]. PhD dissertation, Cambridge: MIT, 1985.
- [16] Takahashi, H.. Predicate Movement and Multiple Subject Constructuons in Japanese [J]. Liberal Arts, 2007 (1): 21-41.
- [17] Tateishi, K. Double Nominatives in Japanese [A]. In: Everaert, M., Riemsdijk, H.v. (Eds.), The Blakwell Companion to Syntax, Vol.2 [C]. Malden, MA: Blacwell, 2006: 331-345.
- [18] Uehara, K. External Possession Construction in Japanese: A Psyholinguistic Perspective [A]. In: Payne, D. L., Barshi, I. (Eds.), External Possession [C]. Amsterdam: John Benjamins B.V, 1999: 45-73.
- [19] Xu, J. Possesor Raising in Chinese and Korea [J]. Languages in Contrast, 2005(5): 245-290.
- [20] 柴谷方良.日本語の分析[M].東京:大修館書店, 1978.
- [21] 井上和子.文―文法と談話文法の接点[J].言語研究, 1983(84): 17-44.
- [22] 吉田光演.「多重主語」構文の意味論[J].沖縄大学地域研究所所報, 1990(1): 43-48.
- [23] 久野暲.日本文法研究[M].東京:大修館書店, 1973.
- [24] 三原健一 平岩健.新日本語の統語構造[M].東京:松柏社, 2006.
- [25] 三原健一.日本語の統語構造[M].東京: 松柏社, 1994.
- [26] 杉本武.大主語と総記の解釈[A].益岡隆志,野田尚史,沼田善子(編),日本語の主題と取り立て[C].東京:くろしお出版, 1995: 85-108.
- [27] 小林亜希子.多重主語構文:失われた記述の一般化を求めて[J].島根大学言語文化, 2010(29): 77-122.
- [28] 陈平.汉语双项名词据与话题–陈述结构[J].中国语文, 2004(6): 493-507.
- [29] 蔡维天.制图理论和汉语语法[J].语言学研究, 2019(1): 28-44.
- [30] 丁仁.领有者提升,左缘限制与汉语多重主语句之衍生[J].语言学论从, 2009(39): 340-359.
- [31] 刘丹青.汉语中的非话题主语[J].中国语文, 2016(3): 359-275.
- [32] 刘丹青.制约话题结构的诸参项——谓语类型、判断类型及指称和角色[J].当代语言学, 2018(20): 1-18.
- [33] 朴正久.从类型学视角看汉语形容词谓语句的信息结构[J].中国语文, 2016(4): 387-396
- [34] 宋文辉.现代汉语中是否存在和话题分立的语法主语[J].语言教学与研究, 2020(2): 77-88.
- [35] 田启林 杨晓东.领属性双主语结构的句法分析[J].浙江工业大学学报(社会科学版), 2015(3): 345-349.
- [36] 赵元任.汉语口语语法[M].吕叔湘(译), 北京:商务印书馆, 1968/1979.
東アジア国際言語学会2021年4月 月例会のご案内
東アジア国際言語学会会員
各位
会員の皆様に於かれましてはご清栄のこととお慶び申し上げます。
下記日程にて四月月例会を開催致します。就きましては万障繰り合わせご参加頂きたくお願い申し上げます。
月例会担当 大島吉郎
- 発表者
- 徐 衛(蘇州大学/花園大学)
- テーマ
- 「忽然」と「突然」に関する考察
- 日時
- 4月24日(土)午後4時~6時
- 方式
- Zoomミーティング
- URL
- https://zoom.us/j/98007371482?pwd=SGRxQnVuSVpSY3AybjJHUGFLSndNdz09
ミーティングID:980 0737 1482
パスコード: 629315
発表要旨
「然」で終わる言葉において、二文字の語彙が189語あるが、文語では「タリ活用」、口語では「ト・タル型活用」として存在するのは171語である。その中で副詞に使えるのは「果然、俄然、忽然、全然、断然、突然」という6語しかない。
本研究では、副詞の用法がある「忽然(こつぜん/こつねん)」と「突然(とつぜん)」について、国立国語研究所コーパス開発センターが開発した「まとめて検索『KOTONOHA』」「現代日本語書き言葉均衡コーパス(BCCWJ)の日本語歴史コーパス(CHJ)」及び北京大学漢語語学研究センターが開発した「CCL語料庫」、台湾中央研究院語言學研究所が開発したコーパスなどを利用して具体的な考察を行った。その出現頻度と使用実態の通時的・共時的分析を通じて、日本語における中国語受容の経緯とあり方を検討することを目的とする。
その結果、「忽然」は鎌倉時代の文献に少数みられ、明治・昭和前期と昭和後期・平成の文献における分布が拮抗しているが、「突然」は明治時代の文献に出現し始め、昭和後期(戦後)になると使用率が前期より10倍以上増加したことがわかった。また、「忽然」はト型活用と副詞に用いられるが、「突然」はそれ以外にナ・二活用と名詞の使い方もみられる。それに対して、中国語において「忽然」はその出現が「突然」より遥かに早かったが、近・現代に入ってもその使用率が「突然」より遥かに高いことも明らかになった。
【参考文献】
辛島美恵,2000.仮名文書の形容動詞(一)形容動詞語彙表[J].九州産業大学国際文化学部紀要(16):1-17.
倉田静佳,2003.馬琴の読本における「然」が後接する漢字語の字音語振り仮名 狩野文庫蔵本『南総里見八犬伝』を中心として[J].言語科学論集(07):47-58.
小学館大辞泉編集部.2012.大辞泉 第2版[K].東京:小学館.
千村達志,2000.『日本霊異記』『大日本国法華経験記』における「忽」と「忽然」[J].言語表現研究(16):24-35.
原田登美,2001.漢語形容動詞についての一考察[J].言語と文化(05):101-117.
松田悠哉,2017.語幹に格助詞を伴う形容動詞の用法について[J].東京大学言語学論集(38):123-144.
東アジア国際言語学会2021年3月 月例会のご案内
会員のみなさま
会員のみなさまにおかれましてはご清栄のことと存じます。
年度末を迎えご多用の折とは存じますが、下記日程にて3月月例会を開催する運びとなりました。是非ともご参会頂きますようお願い申し上げます。
なお、開催時間がこれまでとは異なりますので、ご注意頂ければ幸いです。
月例会担当 大島吉郎
- 発表者
- 趙海城(明星大学)
- テーマ
- 習熟度別、学習環境別に見る中国語人日本語学習者の副詞の使用傾向
-日本語母語話者と韓国人学習者との比較を通して-
- 期日
- 3月13日(土)
- 時間
- 午後4時~6時
- 方式
- Zoomミーティング
URL: https://zoom.us/j/99024704226?pwd=K1VKUGN0RG04N2hyNWsxMGQ0RXR1UT09
ミーティングID:990 2470 4226
パスコード:430138
要旨
学習者の中間言語対照分析(contrastive interlanguage analysis:CIA)では、多くの場合、母語話者による第一言語(L1)産出と学習者による第二言語(L2)産出が比較され、これにより学習者特有の過剰使用(overuse)、過小使用(underuse)、誤用(misuse)などが特定される(石川2012)。過剰使用や過小使用は、学習者のL2使用や、L2習得の過程を検討する新たな視点を提供してくれる。本発表はI-JAS学習者コーパスを用いて、中国人日本語学習者の副詞の使用傾向について、母語別・習熟度別・学習環境別に考察を行った。その結果、1名あたり産出副詞数は、母語話者は290個であるのに対し、学習者80個~176個で、母語話者の6割以下にとどまっている。また、1万語あたり産出副詞数を見ると、母語話者は565個であるのに対し、学習者は250個~475個で、習熟度があがるにつれ、副詞の延べ産出語数、異なり語数とも増え、日本国内自然環境の中級学習者は475個と母語話者に近づいている。対数尤度比(Log Likelihood Ratio)を補正した数値を使用して各語の特徴度を算出した結果、母語話者に比べ、中国人学習者は「とても、もし、もっと、たくさん、突然、一番、よく、最も、随分」などを過剰に使用し、「そう、こう、まあ、結構、もう、やはり、ちょっと、割と、偶々、偶に」などを過少使用している傾向が見られた。
東アジア国際言語学会2021年1月月例会の案内
東アジア国際言語学会会員各位
新年明けましておめでとうございます。
本年も昨年同様ご支援、ご協力賜りますようお願い申し上げるとともに、本年が本学会ならびに会員みなさまにとりましてすばらしい一年となりますようお祈り申し上げます。
本年最初の月例会の準備が整いましたので、下記の通りご案内申し上げます。
今回より、試みと致しまして参加者の皆様が気軽に情報交換できる「サロン」として活用頂けるよう「ブレイクアウトルーム」を設けます。ご参加頂いた会員のみなさまを「共同ホスト」に指定することで、「ブレイクアウトルーム」への出入りが自由に行えるようになります。相互に「チャット」で連絡を取り合い、「ブレイクアウトルーム」に入室し、発表とは別の「空間」を共有することが可能となります。2月に開催されます総会の予行演習も兼ねて、実験的に実践してみようと考えておりますので、試行頂けると幸いです。
奮ってのご参加をお願い申し上げます。
月例会担当 大島吉郎
- 期日
- 1月23日(土)
- 時間
- 午後6時から8時(日本時間)
- 発表者
- 単艾婷(西南学院大学言語教育センター)
- テーマ
- よりオーセンティックな中日翻訳の実現を目指して
―散文翻訳課題の分析とその応用可能性―
- 開催方式
- Zoomミーティング
URL:https://zoom.us/j/95312189138?pwd=K1oyRkk2blJveUZiaGRTWVpYUGxJUT09
ミーティングID:953 1218 9138
パスコード:035566
要旨
「翻訳する」ということは、起点テクストに内包される意味を正確に把握し、目標テクスト上に等価に表現する行為であり、起点テクストの解釈と目標テクストの訳語の創造が一体となってはじめて成立するものである。そして、この「解釈」と「訳語の創造」が両立してこそ、よりオーセンティックな翻訳を実現できると考えられる。本発表では、日本人中国語上級学習者の散文翻訳課題(起点テクスト:林清玄 ≪雪的面目≫)の産出物を研究対象とし、産出物(翻訳文=目標テクスト)中の「誤訳が共通して認められる箇所」および「翻訳に個人差が認められる箇所」の傾向と原因を、「語・句」「文法・構文」「語用」の三つの観点から分析した結果について報告する。また、それらを新たな読解教育カリキュラムの構築やテクスト言語学における理論構築にフィードバックするための予察的な提言を行う。
東アジア国際言語学会2020年12月月例会の案内
東アジア国際言語学会会員各位
下記要領の通り、12月月例会を開催致したくご案内申し上げます。会員の皆様の参加をお願い申し上げます。
月例会担当 大島吉郎
- 期日
- 2020年12月19日(土)
- 時間
- 18:00~20:00(終了後、20分程度情報交換の時間を設けます)
- 開催方式
- Zoom
https://zoom.us/j/96377404749?pwd=ZkJLall5bVc5SEs2SkxCMU9QZUphZz09
ミーティングID: 963 7740 4749
パスワード: 395836
- 発表者
- 清華大学 范寛 氏
- 題目
- 空間的場所※①を表す「に」と「で」のメカニズム
―「池に金魚が泳いでいる」を出発点に―
- キーワード
- 空間的場所、「に」、「で」、メカニズム
注:※①本稿では、対比になる空間的場所は、指向性を含意した着点を除外し、動作や出来事などが成り立つ場所である。
要旨
場所を表す「に」と「で」の区別研究は長い歴史がある(神尾(1980)、奥田(1983)、赤羽根(1987)、中右(1998)、定延(2004)、佐野(2013)等)。ただし、場所の意味用法を検討する時、「池に金魚が泳いでいる」や「町に川が三本流れている」のような文にあまり言及していないことが観察できる。述語動詞が動作や作用の場合、格助詞「で」により場所を表すとよく考えられているが、上の文ではなぜ「に」が使われているのかを解明したいことが本稿の出発点になった。
なぜ「で」ではなく、「に」であるかを解明するには、「に」と「で」は各自でどんな場所を表すかを明確にするのが第一歩であろう。「に」は存在の場所を表すが、「で」は動作や作用の行われる場所を表すという通説のほか、神尾(1981)では、「に」は述語句と直接結びついた位置の指定を行い、「で」は文全体と結びついて述語句の表す動作、出来事、事態などの生ずる背景となる場所を指定するという相違を持つと主張している。奥田(1983)と中右(1998)等も類似した見方をとっている。また、神尾(1980)と中右(1998)では、場所を表す「で」は偶然的で、たまたまその場所で成り立つが、他の場所もありうるという含みを持っているが、「に」は他の場所が考えられないという語彙的な区別があると指摘した。本稿では、述語動詞が一種の運動であるが、空間的場所を「に」で表す文も考慮に入れ、通説と神尾説(神尾説をはじめ、奥田説と中右説なども含め)の適当性をロジック的に論証し、「に」と「で」の各自の特徴を再検討してみた。
今の段階の研究によって、以下のような結論に辿り着いた。
- デ格全体が偶然的な場所とは言えないし、ニ格が定まった場所とは限らないので、「偶然的」対「必然的」というような語彙的な区別が顕著的に見えない。
- 場所格と述語動詞の結びつきの強さは明確に分断できるのではなく、度合いの連続 性がある。
- 「に」が存在の場所を表すことは「池に金魚が泳いでいる」のような文の中でも成立している。
東アジア国際言語学会 2020年11月月例会のご案内
東アジア国際言語学会会員各位
下記要領にて11月月例会開催の運びとなりましたので、ご案内申し上げるとともに、ご参加のほどお願い申し上げます。
月例会担当 大島吉郎
- 日時
- 11月14日(土)18:00~20:00
- 方式
- Zoom会議
- URL
- https://zoom.us/j/92429006771?pwd=eGZuZDBMdmJscElEajRveUxGeFZXUT09
- ミーティングID
- 924 2900 6771
- パスコード
- 840929
- 発表者
- 胡春艶(大東文化大学大学院)
- 発表テーマ
- 『紅楼夢』におけるAA型形容詞重畳式について
発表要旨
『紅楼夢』は明清時代を代表する白話小説であり、前八十回は曹雪芹の作、後四十回は後人の補作とされる。この小説は、賈宝玉と林黛玉の悲恋を中心に、多彩な人間像、当時の生活を詳細に描くことから、中国封建社会の百科事典とも称される。『紅楼夢』における形容詞重畳式は豊富かつ多様な形式が用いられる。同書は北京官話及び、当時の北方社会における言語の実態を反映している。本発表では、『紅楼夢』前八十回を言語資料として、その形容詞重畳式を整理し、AA型形容詞重畳式を中心に網羅的な統計分析を行い、語構成、文成分および文法意味を考察することで、『紅楼夢』におけるAA型形容詞重畳式の使用状況及び特徴を明らかにする。
東アジア国際言語学会 2020年10月月例会のご案内
会員各位:
下記要領にて十月月例会を開催致したく存じます。レジュメは当日、Zoomのチャット機能を使いダウンロードできるように致します。奮ってのご参加をお願い申し上げます。
月例会担当 大島吉郎
- 期日
- 10月18日(日)
- 時間
- 18:00~20:00
- 発表者
- 趙丹楠(大東文化大学大学院)
- テーマ
- 接触場面における依頼発話行為について
―中国語母語話者、日本人中国語学習者と日本語母語話者の依頼表現を中心に―
- 開催方式
- Zoom
- URL
- https://zoom.us/j/91626139898?pwd=aUdWY1VNRU1YQmkyMXpSTkNGQU85QT09
ミーティングID:916 2613 9898
パスワード:045260
発表要旨
本発表では、日本語母語話者と中国語母語話者の依頼発話行為について、両言語の依頼表現における、それぞれの談話構造の相違点について調査した結果を基に、両言語の依頼発話行為の発話パターンを明らかにする。また、日本人中国語学習者が中国語母語話者に依頼する際の発話に出現する誤用を収集し分析することで、接触場面における誤解を回避し、円滑なコミュニケーションを図ることに寄与するとともに、中国語教授者が日本人中国語学習者の依頼表現を指導する際に、効果的なコミュニケーションの方法を提示することを目的とする。
2020年度9月月例会開催のご案内(Zoom開催)
2020年8月10日
東アジア国際言語学会会員 各位
月例会担当 大島吉郎
2020年度9月月例会開催のご案内
会員の皆様におかれましてはご清祥のこととお慶び申し上げます。
下記要領によりまして、9月月例会を開催致します。
会員の皆様のご参加をお待ち申し上げます。
記
- 発表者
- 呉 雨(國學院大學文学研究科後期課程)
- テーマ
- 中国語のビジネス文書における副詞
―日本語ビジネス文書における副詞との対照をめぐって―
- 日時
- 2020年9月13日(日)午後6時~8時(日本時間)
- 開催方式
- Zoom https://zoom.us/j/96650598482?pwd=SG50ZUUyeHl0clhBYVIwSkRaY21yZz09
要旨
国際ビジネス事業の発展とともに、日本の企業が続々と海外へ進出し、中国の企業と中国語でのやりとりが必要されるようになった。本稿は、中国語のビジネス文書に使用される副詞の特徴を明らかにし、日本語のビジネス文書における副詞との対照研究を試みる。
3冊のビジネス文書マニュアル本と2冊のビジネス文書教科書を調査資料とし、使用される中国語の副詞の異なり語数は87語であり、延べ語数は348語であった。本稿では、先行研究の分類方法を参照し、「程度、状態、時間、範囲、限定、否定、可能性、判断、語気、関係」と10種類に分類し、「時間を表す」という分類の副詞が最も多く使用されることが判明した。
日本語のビジネス文書と比べると、日中のビジネス文書では、口語的な副詞が出現しにくく、相手を配慮する副詞が使用されることが共通している。中国語のビジネス文書における自分の立場から事案を述べることが特徴的であり、日本語のビジネス文書では常に相手の気持ちを優先することと異なる。
これより前の実施分については学会月例会(過去実施分)をご覧ください。